研究成果の概要は下記の通りである。 1. 年齢1〜3歳の保育園児130名(男児74名、女児56名;月齢18〜41か月)を被験児として、「家庭における食事場面の養育者による観察ならびに食事調査」「味覚感受性検査」「乳幼児発達検査」を行って、幼児初期の食事行動が味覚感受性や心身の発達にどのような影響を及ぼすのか調べた。幼児初期の食事状況と味覚感受性との間には、塩味感受性を除いて統計的に有意な関連性はみられなかった。しかしながら、幼児期初期の食事状況と発達の間には、6発達領域のうち、4ないし5領域において有意な関連性がみられた。幼児初期の健全な食事状況は、心身の発達(例えば基本的習慣、発語、言語理解の領域)に好影響を及ぼした。これらのことから、幼児初期における家庭での食事のあり方は、塩味以外の味覚感受性にはほとんど影響を及ぼさないが、心身の発達にはなんらかの影響を及ぼすのではないかと考えられた。 2. 年齢1〜2歳の家庭児33名(男児20名、女児13名;月齢18〜29か月)について、われわれが各家庭を2回訪問し、食事場面の観察(発話・食事時の表情・食事のし方等)を行ってビデオ収録した。これらの児についても、「味覚感受性検査」「発達検査ならびに気質検査」を実施した。ビデオ収録した食事場面については、発話ならびに表情等を分析し、「発話」「味覚感受性」「気質」の相互関連についても検討した。食事場面における母親の賞賛発話出現状況と気質(周期性、接近性、順応性、反応強度、気分の質)との間には相互関係が認められた。
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