研究概要 |
1.過去22年間の65歳以上の自殺死,孤独死について検視資料により統計的考察を加えた。平成10年度は特に80歳以上の自殺死の著増を認めた。明治気質の老人は,最期まで自分の力で生き切る「生き状(ざま)」の一選択肢として,自殺が見えてくる。老人孤独死ひいて自殺死は,一般人にはイメージし難い。その点この調査研究は,科学的分析に基き老人孤独死ゼロに向けての道案内になれる。また自殺防止の一方策として,然るべき「食」の提供を提案する。2.独居老人訪問の聞き書き調査を続けながら“独居老人訪問がターミナルケアである"という確固たる方向づけができた。老人はそれぞれに異なった生活歴をもちパーソナリティもさまざま。生きる尊さを限りなく追究したい-これは本研究の発端である。ごく普通の人間の生への直向きな,その心を記録に残した「いまを生きる」。生涯学習が叫ばれる今日,短大・大学の学生の卒後の人生設計に,老人との人間関係の構築を行動・思索の規範として位置づける。その活動拠点は,小学校の空教室を活用した。高齢者と学生,教員が過疎地あるいは街の中で寝食を共にし,互の愚痴も聴き合うなかで人間への信頼と一瞬一瞬の命の煌きとその重さを再考できた。また,本年4月からの男女共同参画社会づくり支援事業のつもりでエッセイ集「手を携えて 心を通わせて」を刊行した。何れも平成12年からの介護保険制度実施を前に揺れる老人の心の問題解決に,一選択肢を与えるものと考える。3.人材育成と地域活性化-独居老人訪問に当り,老人が主体性をもって「ニーズ,ウォントを周囲の人に訴える能力を身につける訓練をしましょう」と声をかけている。山間僻地と街の高齢者の交流を森林浴に求め,ストレス解消して心と身体の健康をめざした。心が癒され,人の輪が拡がり,ソーシャル・サポートネットワークが推進される。リタイアメントコミュニティの一環として「ふれあいネットワーク」(代表・原田寛子)を結成し,10周年を迎えた。会員はアクティブ・メンバーが百人程度。毎月1回第2火曜の午後1時から,専門の講師による勉強会と後半は会員相互の情報交換が楽しい。尚,平成12年度は,本科研の研究期間ではないが,老人孤独死ひいて自殺死ゼロのサポートネットワークの完結に向けて,この実践的調査研究が,社会の中で機能するよう,システム化を完了させたい。そのため追加申請を希望する。
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