冷暖房の急速な普及は、快適な人工環境を拡大した。快適環境にいれば、精神的に快適となるだけでなく、体温調節のためのエネルギー消費は最小となる。この様な状態に長くいると、体温調節能力が衰えて、温度変化にきわめて弱い人間が出来るのではないかと危ぐされている。本研究の目的は、冷暖房の普及が児童の体温調節機能の発達に及ぼす影響を環境人間工学の観点から明らかにすることである。 成人を対象として開発された耐暑性テストの児童への有効性を、数名の児童において詳細に検討した。その結果、成人に行われている下腿部温浴60分間は、6〜8歳の児童には負担が大きすぎることが明らかとなった。耐暑性を調べる実験を人工気候室内で行った。すなわち、児童を裸体で30分間30℃、70%の高温室に滞在させ、後に下腿を42℃の湯に30分間温浴させた。その間、直腸温、皮膚温、血圧、心拍数、総発汗量、カプセル法、濾紙法による局所発汗量を連続測定した。対照として大学生の女子を被験者とした。青年と比較すると、児童の体表面積あたりの発汗量は多く、しかも、皮膚血流量が大きいことが示された。しかしながら、平熱の程度、冷房の使用頻度、男女等で、耐暑性を比較検討したが、大きな差異は認められなかった。次年度には、被験者数を増やし統計処理行なう予定である。さらには、児童の耐暑性と青年男女との比較、夏季と冬季の比較検討を行なう。
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