実験1では、ドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取に伴う組織脂質過酸化(LP)反応感受性の変化を、主として過酸化脂質(LPO)スカベンジャー成分の変動、さらに、総脂質、中性脂質および各種リン脂質の脂肪酸組成の変化の面から検討した。この際、DHA摂取期間を従来の15日から1ヶ月強に延長するとともに、低レペルVE摂取の影響についても検討した。得られた結果は、平成9年度の知見と基本的には同様であるが、とくに、DHAの摂取期間を倍にすることおよび低レベルのVEの摂取で新たに次の知見が加わった。1.長期間の投与によりVEの抗酸化効果が肝臓以外の組織で発現し易くなっており、一穐の適応現象が認められた。2.低レベルVEの投与では、組織総脂質の脂肪酸組成から計算されるPeroxidizablity Index(PI)とLPO生成がほぼ一致しており、PIを指標として用いることの妥当性が示された。また、この時には組織の障害も観察された。3.組織中性脂質およびリン脂質種中のDHAの含量を定量し、H9年度の結果を定量的に再確認した。 実験2では、n-3系脂肪酸のα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、DHAの摂取に伴う組織LP反応感受性の変化を実験1と同様に検討した。得られた結果は、実験1と基本的に同様であるが、とくに、各種n-3系脂肪酸の摂取に伴う組織におけるLPOの生成は、組織総脂質脂肪酸のPlの増加と直接的に関連するとともに、DHAの取り込みがLPO生成冗進に重要であることを示唆していた。しがし、この場合にあっても、総脂質脂肪酸のPl程には、いずれの組織でもLPOの生成は高まらず、組織傷害も認められなかった。以上の結果から、通常レベル以上のVEの摂取が傷害の防止には必須であることおよびn-3系脂肪酸の組み合わせをどの様にするかが、LPO生成の抑制とその有効な生理効果を引き出す上で重要なことが示唆される。
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