本研究では、DHAを中心としたn-3系脂肪酸の摂取と各組織における過酸化脂質・フリーラジカルの生成について、主に過酸化脂質スカベンジャー成分の変化と総脂質、中性脂質及び各種リン脂質の脂肪酸組成変化との関連から検討した。 その結果、DHA摂取レベルの増加に伴う各組織(肝臓、腎臓、脳、睾丸)の過酸化脂質生成は、いずれも総脂質の脂肪酸組成から算出された酸化され易さの指標であるPeroxidizability Indexから予測されるほどには上昇せず、組織細胞の傷害も認められなかった。その理由としては、1)水溶性抗酸化剤のアスコルビン酸およびグルタチオンの生成が高まり、トコフェロキシルラジカルからトコフェロール(VE)への還元再生反応が賦活化され、抗酸化能が亢進していると考えられること、2)組織ごとにn-3系脂肪酸、特にDHAの取り込みが著しく異なり、DHAの取り込みの少ない組織においては過酸化脂質の生成が高まらないこと、3)DHAのホスファチジルエタノールアミンへの取り込みが増加し、VEの抗酸化作用に対するホスファチジルエタノールアミンのシネルギスト作用により、ホスファチジルエタノールアミンに取り込まれたDHAの酸化安定性が高まると考えられること、4)リン脂質中で立体的に安定なコンフォメーションを取ることによる酸化に対する感受性が低下すると考えられること、5)ペルオキシゾームβ-酸化系でのDHAの分解促進がおこること、等が考えられた。
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