研究概要 |
第1にルネサンス期から科学革命期に至るまでの力学観の形成について検討した.ガリレオ・ガリレイやニュートンは,古典力学を実験データや観測データと理論を緊密に結合するものとして展開したが,そのような実践的な学問観はスコラ学に代表される中世的学問論には存在せず,ルネサンスの人文主義者や技術者たちに起源を持つものである.実践的学問観の誕生の過程を遠近法,建築学,機械的技術を取り上げて検討した.とくに古典力学の直接的先駆が機械的技術の発展と結びついた理論機械学にあることは,今日「力学」と翻訳されている"mechanica"が本来は機械の働きに関する理論的考察を表す「機械学」を意味していたことからも伺われる.この研究は論文「ルネサンスにおける実践的学問観」としてまとめた. 第2に古典力学の基本法則とされているニュートンの運動法則について歴史的検討を行った.ときに第二法則に焦点を当て,我々が第二法則としてみなしているものは必ずしもニュートンが主張したものではなく,18世紀にオイラーらによって解析化されたものであり,ダランベールやラグランジュらの18世紀の研究者たちもニュートンによるものとは考えていなかったことを検討した.さらに第二法則が力学体系の基礎原理として認められるのは,19世紀に入ってからであることを,18世紀の数理科学者たちとともに19世紀の科学哲学者ヒューウェルとマッハによる力学の歴史の検討を通じて明らかにした.現在論文「古典力学における運動法則の歴史性-第二法則を中心に」にまとめている. また昨年度に引き続き,カヴァリエリの運動論関係のテキスト(『燃焼鏡』の一部),さらにデカルトの『哲学原理』・『宇宙論』およびホイヘンスの『遠心力論』・『衝突論』・『振子時計』のテキストを,『デカルト全集』や『ホイヘンス全集』などから入力し,電子テキスト化し,さらにそれを元にしてコンコーダンス(用語索引)を作成する作業を進めている.
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