研究概要 |
今年度はガリレイの原子論に関して,数学的運動論との関係において考察した.彼は『新科学論議』第1日において物体の凝集力を原子論の立場から論じているが,その際に数学的無限小に関する議論を展開している.この議論に関しては物質論に数学の議論を用いたものとして原子論史の研究者からは低い評価が与えられてこなかった.しかしガリレイにとっては,物質的世界と数学的世界の構造的同一性こそ,数学を自然現象の研究に適用することに関する主要な根拠であり,両世界における共通の構成要素としての「不可分者」の概念は数学的運動論の基本概念としても重要な役割を果たしていた.この研究は「ガリレオの数学的原子論」としてまとめた. さらに昨年度に引き続き,17世紀力学関係著作のテキストの電子を進め,さらに重要単語に関するコンコーダンスを作成した.報告書では,ガリレイ(『力学論』,『機械学』,『浮体に関する対話』,『偽金鑑識官』,『天文対話』,『新科学論議』,「比例定義論」,「衝撃力論」)の他,トリチェッリ(『運動論』と『アッカデミア講義』),デカルト(『哲学原理』),ホイヘンス(『振子時計』,『衝突による物体の運動について』,『遠心力論』)に関して,重要と思われる約2,000語を選び,各人毎にコンコーダンスを整理した.総単語数は今回報告書に掲載した単語数の約10倍の20,000語を越えているので,コンコーダンス全体に関してWebサイトでの公開を予定している.さらに現在ニュートンの『プリンキピア』第1巻の電子化と,そのコンコーダンスの作成を進めている.
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