十九世紀後半から現代に至る欧米および我が国の科学者・研究者たちが、科学技術の重要性を訴えた言説とその内容を資料調査とその分析を通じて明らかにした。特に今年度は、十九世紀フランスの科学者L.パストゥールと十九世紀イギリスの科学者G.ゴアの言論活動に着目し、二人の科学技術立国論のインパクトについて検討した。彼らによる科学技術立国論とその背景としての科学技術の制度化ないしは専門職業化(institutionalization and/or professionalization of science and technology)の展開との相互関係について検討した。また、これに関連して平成9年8月末から9月初旬にかけてイギリスに出張し、関係分野の研究者と研究交流の機会をもつとともに資料の収集にもあたった。 我が国における科学技術基本の制定(1995年)と科学技術基本計画の策定(1996年)については、1980年代以降の大学関係者を中心とした科学技術立国論の展開が大いに貢献したと思われる。そこで、現代の我が国の有力な大学人による科学技術立国論を検討した結果、十九世紀西欧の科学者の科学技術立国論と、極めて類似していることが明らかになった。
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