研究概要 |
この研究の目的は,日本と欧米における「物理学に関する基本的な概念・術語の形成過程」を明らかにすることにある。そして今回の研究は,目的に沿った一連の研究の一環であり,とくに「日本における熱(火)の概念の形成過程」を明らかにしようとするものである。 そして今年度は,4年計画の研究の2年目であり,計画に沿って以下の作業を終了した。すなわち,日本の江戸時代において「熱(火)の概念」はどのように認識されていたのか,その変遷の経緯を明らかにするための作業として, (1) 中国から舶来された「漢文科学書」において,熱(火)の概念はどのように認識されていたのかを調査した。 (2) 中国から舶来された「漢文科学書」は,日本人の熱(火)の概念認識にどの程度の影響力をもっていたのかを調査した。 (3) その他,欧米からの科学・技術関係図書の舶来による日本の熱(火)の本質に関する認識への影響について調査した。 そして以上の調査の最中に,その副産物として「自然との<共生>と<寄生>の間-自然,科学,技術の概念の変遷を巡って」と題して『開発学研究』Vol.9,No.1,1998年。に技術開発の方向を見直すべく 「総説論文」を発表した。「自然」の語意には「有為自然」と「無為自然」の二種があること。そして「科学」の本質と「技術」の本質との相違を明確にし,「自然に従う人為」と「自然に反する人為」を分別して開発の方向を示唆したものである。
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