研究概要 |
本年度は,対人的・集団的な動きの場における跳躍能力の本態を明らかにするために,5回連続跳躍の成績(運動時間=接地時間+滞空時間)に影響を及ぼす技術的・体力的要因について検討した.この課題を明らかにするために,大学のバレーボール,バスケットボール,陸上競技の短距離・跳躍競技者50名を対象にして,等しい高さ(20cm,40cm)およびランダムな高さ(15〜45cm)の5回連続跳躍(上方に設定した目標をできるだけ速くタッチする),およびスクワットジャンプ,垂直跳び,ドロップジャンプなどの1回跳躍(膝関節角度120,90,60度)を行わせた. その結果,5回連続跳躍における接地時間を短縮するための技術的要因の一つは,着地前にあらかじめ膝関節を屈曲させる先取り動作であること,および滞空時間を短縮するための技術的・体力的要因の一つは,膝関節を柔軟に利用し,跳躍の高さの違いに応じて膝関節の屈曲角度を着地前に予測し調節する技術およびその基になる調整力であることが認められた.また,5回連続跳躍の運動時間が短縮していく過程については,高さの低い跳躍では接地時間と滞空時間の両者が同時に短縮していくが,高さの高い跳躍では接地時間がより短縮していくこと,また、ランダムな高さの跳躍では,成績の劣るレベルでは接地時間がより短縮していくが,あるレベル以上になると両者が同時に短縮していくことなどが認められた. 上述の結果は,跳躍の高さやタイミングを状況に応じて調節することが要求される対人的・集団的な動きの場での跳躍能力は,高く跳ぶことのみが要求される個人的な動きの場での跳躍能力とは異なる要因によって影響されることを示すものである.本研究の知見は,球技スポーツにおける体力トレーニング法を確立する際に有用になろう.
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