スポーツ選手の競技引退についてスポーツ心理学ならびにスポーツ社会学の両面から調査研究を進めた。 (1)Jリ-グならびにJFL所属のプロサッカー選手を対象として、過去4シ-ズン(平5から平8年度まで)のキャリア移行(移籍)や引退の実態について質問紙調査を実施した。移籍に関しては移籍時の選手の地位・理由・移籍先・納得の程度・移籍の予期等について、そして引退に関しては、引退時の選手の地位・理由・現在の地位・納得の程度・引退の希望等について情報を各チームのフロントを通して得、種々の角度から分析検討した。 (2)キャリア移行や引退経験のあるプロサッカー選手4名に対して、インタビュー調査を行った。そこでは、競技引退後の適応問題に影響すると予測される2要因(社会化予期・時間的展望)に関連したエピソードを中心に事例の分析を行った。 (3)現役のプロサッカー選手ならびにコーチングスタッフがキャリア移行に対してどのような認知をしているのかについて、文章完成法(SCT)を含む質問紙調査を実施した(現在回収中)。 (4)スポーツ社会学領域から報告された競技引退に関する先行研究を概観した。また、2名の国際大会代表経験を有する韓国の元スポーツ選手に対して、社会学的要因からのインタビュー調査を行った。ここでは、以後この種のテーマに対する社会学領域からの研究課題を明確化にした。 本年度は心理学と社会学の2つの研究領域間で統合をはかるまでには至らなかったことから、今後は積極的に情報交換を行う必要がある。また、面接調査の対象事例を拡大し、引退後の適応に影響する要因の明確化を行いたい。さらに、社会的背景を異にする韓国との対比もはかる予定である。
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