研究概要 |
我々は1992年から5年間,日本のトップまたはそれに準ずるレベルのジュニア選手の形態,体力,技術,トレーニング状況を縦断的に観察することで,ジュニア期における体力トレーニングのありかたについて検討してきた。こうした観点からなる研究はそれまで見られず,5年間の結果は競技力の向上をめざす日本テニス界にとって貴重なデータとなっている。本研究はこれまでの研究を継続・発展させようとするものである。本研究の測定項目は、骨年齢、形態、MRIによる脚筋形態、膝・肘の等速性筋力、無酸素性・有酸素性能力、基礎的運動能力、テニスのサービス技術および速度など多岐にわたる。本紙面には制限があるため、今回はサービス速度に影響を及ぼす脚筋の形態的・筋力的要因について、男子ジュニア選手の結果のみ報告する。 被験者は全国または各地方の男子トップジュニア選手のべ13名(15.6±0.9歳)であった。測定は1年間隔で2度行われ、継続被験者は4名であった。測定は大腿中間部の大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋群、脂肪の各横断面積について、また等速性膝伸展・屈曲筋力(60,180,300deg/sec)について行った。サービス速度はハイスピードビデオカメラを用いて分析した。 サービス速度とハムストリング横断面積との間に相関関係が見られなかった一方で、大腿四頭筋横断面積との間には相関関係が認められた。筋力においても、サービス速度との相関関係が認められたのは膝伸展筋力60deg/sec)のみであった。これは、サービス動作時に体幹を捻り戻すきっかけ作りとして、膝関節を伸展させて体幹を上方へシフトさせる必要があること、そのためには遅い角度での十分な膝伸展筋力と大きな大腿四頭筋量が必要であることを示唆するものかもしれない。以上の結果から、日本の男子トップジュニア選手のサービス速度には遅い角速度での筋伸展筋力と大腿四頭筋量が大きく関与していることが示唆された。
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