筋力発達経緯からみた性差と部位差といういわば形態的バランス、筋力発揮機能を決定する因子とのバランス、生理学的成長と相対発育からみた筋力評価そして思春期競技選手の筋力バランスについて横断的資料を収集することを目的とした。 東京都内の小学生1〜6学年児童194名(内女子93名)を対象とした。動的筋力は等速性肘屈曲動作で発揮される関節トルクを測定した。一方超音波法により上腕屈筋群の解剖学的横断面積を測定した。また生理学的年齢の指標としては、左手部X線写真を撮影し、Tanner-Whitehouse2法(TW2法7))により算出した骨年齢を骨年齢を採用した。 同一学年内でみると、暦年齢は当然のことながら1歳以内の範囲であるのに対して、骨年齢の分布におけるばらつきは大きく、分布範囲は3.6歳から6.4歳の幅をもっている。特に思春期に近づいていると思われる6学年児童での骨年齢は、最高14.1歳、最低7.7歳で、標準偏差は1.23歳と大きなばらつきをみせている。このことは、暦年齢あるいは学年は同じであっても、個々の生理学的発育速度は異なっていることを裏付けている。 骨年齢は特に身長および体重という形態との関係において、全学年とも統計的に有意な相関係数が示されている。骨年齢は骨成熟を基準とした尺度であるために、特に身長との相関関係は強く、全学年とも0.1%水準で有意な相関係数が得られている。骨年齢と上腕屈筋群の筋横断面積および静的最大筋力との関係については、3学年以降において統計的に有意な相関係数が認められるようになった。また生理学的発育の個人差は、明らかに筋の形態や機能に影響を及ぼしていることがみられ、子どもの筋力や筋横断面積を評価する場合には、生理学的成熟度をかなり考慮する必要があると言える。
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