現代の若い女性で問題となっている隠れ肥満、すなわち身長と体重で計算される体格指数(BMI)では普通もしくはやせと判定されるが、体脂肪率(%fat)が多い(筋・骨量が少ない)タイプがどの程度存在するかの実態を明らかにするために、昨年と同様の方法により大学新入生女子全員を対象として体格、身体組成、体力の測定を実施し、標本数を追加した。本年度の対象者数は97名であり、うちBMIが24未満(正常あるいはやせ)でありながら%fatが30%以上を示した者は6名、27〜30%の肥満気味の者が14名存在し、全体の20.6%が隠れ肥満傾向にあると考えられた。この割合は昨年入学者とほとんど同様であった。また、%fatと脚伸展パワーとの間に有意な負の相関が認められ、筋量が相対的に少ない者は発揮パワーも劣ることが、昨年と同様に本年度入学者においても確認された。一方、昨年は身体組成の改善を要する者に対して3ヶ月の運動プログラムを処方したが、自主性に任せたために実施率が十分でなく、身体組成の改善効果は得られなかった。そこで、本年度は同じ対象者を含む昨年度入学者のうちの58名(肥満傾向の者22名、肥満でない者36名)に対し、トレーニング回数の記録と食事調査の実施などによる動機づけを行って、再度3ヶ月のトレーニングの実施効果を検討した。その結果、肥満群、非肥満群とも体重とBMIの減少及び脚伸展パワーの増大が認められた。そして、非肥満群は体脂肪率は変わらず除脂肪量が減少したのに対し、肥満群は除脂肪量は保ち体脂肪率が減少した。また、肥満群の一部(12名)について、昨年から引き続き皮下脂肪厚と筋厚の変化を調べたところ、今回のトレーニング後に上腕前部と腹部の筋厚の増加が認められた。これらの結果から、筋力トレーニングと有酸素性トレーニングを併せた運動を週1〜2回、3ヶ月程度継続することで、若年期女性の身体組成の改善と筋機能の向上が期待できると考えられた。
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