今年度の本研究の目的は、急増するわが国におけるスノ-ボード事故の実態とその問題点について資料を収集し、リスクマネジメントの要素を取り入れた事故防止対策について考察することであった。リスクマネジメントとは、いかに事故やトラブルを防止し安全性を向上させるか、万が一事故が発生した場合、最小限の費用と時間で、それらからもたされる損失を最も効率的に処理するか、いかに法的責任を回避するかに関する対策である。 スノ-ボードによる事故の実態については、死亡事故を調査したところ、93-94 シ-ズンまでは0件であったが、94-95 シ-ズンに3件、95-96 シ-ズンに15件、96-97シ-ズン11件で、まさにここ3シ-ズンで急増していることが分かった。95-96 シ-ズンは初心者スノ-ボーダーによる緩斜面でのいわゆる逆エッジ転倒により頭部を損傷する硬膜下血腫による死亡例が大半を占めていたのが特徴的であったが、96-97 シ-ズンではスノ-ボーダーの技能レベルがあがってきていること、ジャンプの失敗で中国が死亡するなど負傷者の低年齢化してきていること、また滑走中にスキーヤーに衝突して死亡させるなど加害者となる例も発生し事故の傾向が多様化してきている状況である。 リスクマネジメントに関わる対策としては、滑走中に転倒し頭部を損傷した疑いのある者に対して要注意の症状と脳神経外科の病院の所在を示した注意書きを渡し医師の治療を早期に受けられるようにするシステムについて、その効果を新潟県岩原スキー場で調べたところ、危険な兆候に該当したとしてスキーパトロールが救急車を要請して病院に搬送した例が3例あり、処置が早かったことから死亡事故となることを防ぐことができたもので、非常に効果が大きかった。今後この対策を運用に工夫を加えて広めていくことが死亡事故の防止に有効であると考えられる。
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