今年度の本研究の目的は、依然増加し続けるわが国におけるスノーボード事故の実態とその問題点について資料を収集し、リスクマネジメントの要素を取り入れた事故防止対策について考察することである。 スノーボードによる事故の実態は、97-98シーズンの死亡事故では12人(男9人、女3人)を調査により確認した。94-95シーズンに国内発のスノーボーダーの死亡事故が発生して以来、死亡事故はスノーボーダーの技能レベルが向上していくことに伴い重大事故の主体が初心者の転倒事故から中・上級者の無謀な滑走や行動による事故へと変遷してきている状況である。特にいわゆるバックカントリーとよばれるスキー場管理区域外に立ち入り転落事故や雪崩事故を起こすことが増えてきている(1999年2月13日新潟県ARAI、3月13日北海道ニセコなど)。これら管理区域外に踏み込むスノーボーダーの行動を規則すると共に事故の責任が本人の責任か、管理者の責任か明確にする方法がリスクマネジメント対策として必要である。それには、立入禁止区域が明らかにされる管理と且つそれを犯した責任について示された告知文、本人の意思を証明する確認書(「危険事項を十分に理解している旨を証明する署名入り書類」)または周知の事実となるような方法を併用していくことで効果があると考える。今年度は特に危険事項を理解しているという旨の確認書を試作し、一般の大学生に対して、危険を説明し、確認署に署名をさせた後にアンケート調査を実施したところ、確認書に署名することによって事故の責任について自覚が高まるという結果が得られた。また、スノーボーダーに衝突された女性スキーヤーが半身不随となり、スキー場管理者の安全対策が不十分であったとして、損害賠償を求めた訴訟が起きていることなど法的責任を求めて問題となっている状況があることが判った。
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