研究概要 |
今年度の本研究の目的は、スノーボード事故の傷害の実態について明らかにすることであった。2000年2月に全国45ヶ所のスキー場において発生したスキーヤー、スノーボーダーの傷害のうち、パトロールが処置した症例5,567件について分析した。スキー全体の受傷者数は2,470人、スノーボーダー全体の受傷者数は3,075人、その他22人であった。スキーヤーとスノーボーダーの受傷者の割合は45%対55%となり、スキー場におけるケガをする件数はスノーボードがスキーを上回る状況となってきている。また、傷害の発生率を1回のリフトの搭乗当たりで算出するとスキーが0.0068%に対してスノーボードが0.0105%となる。スノーボードがスキーの2.4倍ケガをしやすい状況である。スノーボーダーの傷害部位と傷害の種類を多い順に10傑をみてみると、(1)肩の脱臼(256件)、(2)手首の骨折(209件)、(3)頭部の打撲(187件)、(4)足首の捻挫(171件)、(5)腰部の打撲(138件)、(6)頭部の切挫創(134件)、(7)顔部の切挫創(114件)、(8)膝の捻挫(111件)、(9)前腕の骨折(108件)、(10)肩(鎖骨)の骨折となる。傷害を原因別でみると、(1)自分で転倒79%、(2)他人と衝突18%、(3)障害物との衝突2%となる。「他人と衝突」での傷害で多い部位は順に(1)下腿、(2)頭部、(3)顔部、(4)膝。「障害物との衝突」で多いのは(1)頭部、(2)大腿、(3)下腿、(4)顔部、となる。スノーボードで発生する傷害は肩の脱臼が一番多いことをはじめ、従来の調査においては把握できなかった受傷の原因別に傷害が異なることもわかり、傷害防止のためのリスクを減らすための対策を検討する資料を得ることができた。特に頭部の傷害を防ぐためのヘルメット着用の必要性等に関しては説得力をもって対策に活かすことができる資料であり意義ある結果となった。 また、スノーボードを大学の授業で指導する際のリスクマネジメントとして、同意書を活用する指導システムを開発し、事故防止、責任回避の目的以上に受講する学生の安全意識を高めることの効果があることが分かった。スノーボードを愛好する年齢層は18歳から20歳代が最も多い状況であるが、スノーボードを始める段階でスノーボードの本質的危険、ゲレンデでのルール、脳内出血の危険な兆候等を講義で周知徹底し、確認・同意書を組み合わせることによってその効果が高められる方法は、リスクマネジメント対策の必要性を裏付ける結果になるといえよう。
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