本研究の目的は、急増するわが国におけるスノーボード事故の実態とその問題点について資料を収集し、リスクマネジメントの要素を取り入れた事故防止対策について考察することであった。'95-'96シーズンは初心者スノーボーダーによる緩斜面での逆エッジ転倒により脳内出血(硬膜下血腫)を起こす死亡事故例がほとんどを占める状況であった。しかし年々スノーボーダーの技能レベルが向上することにより、ゲレンデの管理区域外の斜面を滑って遭難や雪崩事故、ワンメイクと呼ばれるジャンプ台での着地を失敗しての事故、他のスキーヤー等との対人衝突事故等が'96-'97シーズン以降に目立つ状況となっている。リスクマネジメントの要素を取り入れた対策として、滑走中に転倒し頭に衝撃を受けた可能性のあるスノーボーダーに対して、脳内出血の危険な兆候を知らせる注意書きの書類とスキー場周辺の脳神経外科の病院を示した地図を提供する対策は、患者に対して早期に病院で手当ができるようになることで効果がある。その効果について新潟県岩原スキー場で調査した結果、頭を打った可能性があるスノーボーダーに対して、スキー場側が救急車を要請するか否かの判断基準にも利用されていた。調査当時3件の症例に活かされており、死亡事故に至ることを防ぐとともにスキー場側の安全確保の責任を果たす効果がある。また大学の授業でスノーボードを指導する際の対策として、本研究者が同意書を活用した授業を開発した。スノーボードの受講生に対して、スノーボードの本質的危険、ゲレンデでのルール、脳内出血の危険な兆候等を周知徹底し、それらのことを指導されたことを確認する同意書を組み合わせることによって学生の安全に対する意識を高める効果の高められることが判明した。これらリスクマネジメントの要素を取り入れた事故防止対策は有意義であり、その導入の必要性があるといえよう。
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