研究概要 |
身のこなしやスキルの上手下手には,筋の収縮と弛緩をうまくコントロールできること,すなわち筋活動を随意に抑制できることが重要であると考えられる.本研究ではこのような筋活動の抑制という点に着目し,巧みな動作をつくりあげる基礎となる随意運動の抑制制御について,随意筋収縮中にその筋活動を随意にrelaxさせるという課題を用いて検討することを目的とした.昨年度の研究ではRelaxationのための抑制指令が与えられる時期(タイミング)や筋活動の状態を変化させることによって,運動制御様式と抑制機構についての関連について検討を加えたが,今年度はそのデータ数を増やすとともに,両側同時に筋力発揮を行った場合において,左右のそれぞれの対側肢への抑制作用についても検討を加えた. 今年度の実験では前腕屈筋群および伸筋群を被検筋として,握力発揮時におけるrelaxationについて,筋電図,張力,ゴニオグラムなどを測定した.今年度は特に一側肢の強い活動が対側肢へも波及する興奮効果をどのようにして抑制しているのか,また,その抑制がなくなった時,対側肢の筋活動がどのように変化するのかに着目した.得られた主な結果は次のとおりである. 1. 両側同時に握力を発揮すると,一側単独で発揮した場合よりも左右それぞれの筋力は低下した. 2. 幼児では,一側単独で握力発揮している場合でも対側肢に筋放電活動や張力の発揮が検出された. 3. 握力発揮時においてもrelaxationを行う際のlatencyは筋力発揮時のlatencyにくらべ,延長した. 4. relaxationの際にリバウンドするような特有な筋放電パターンが見られた. 5. 両側筋力発揮時に一側肢のみrelaxationすると,対側肢では張力曲線の上昇が見られた.
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