研究概要 |
本研究ではrelaxationという動作を用いて,ヒトの随意運動時における抑制制御について検討を加えた.研究は2つのメインテーマで構成され,ひとつは活動中の筋への抑制指令について,その発揮筋力の強さ-筋出力量,筋力の発揮様式(筋力漸増発揮or一定筋力の持続発揮,筋力の発揮速度など)によって抑制制御がどのように影響を受けるのかという点について検討する.もうひとつのテーマは当該筋の周囲または対側にある同名筋への抑制作用についてである.この場合には両側同時動作を利用し,同側の拮抗筋や対側同名筋への抑制効果について検討を加えた.それぞれのテーマについて2つの実験を計画し,合計4実験を行なった.得られた結果は次のとおりである. 1. relaxation時の反応パターン(特に筋放電パターン)は筋出力量によって変化した. 2. relaxationに関する反応潜時は発揮していた筋出力量とひじょうに強い関係が見られた. 3. 張力の低下し始める時間は筋出力量の影響を受けなかった. 4. ある一定時刻に抑制指令が出されるが,筋出力量が大きいと抑制しきれず,張力低下にもかかわらず筋放電が持続し,各種時間相にその影響が及んだものと考えられた. 5. 筋出力を漸増している時にrelaxする場合,周波数が高くなるほど各種時間相も延長した. 6. 両側同時に握力を発揮すると,一側単独で発揮した時より発揮筋力は低下し,反応時間も延長することが確認された. 7. 両側筋力発揮時に一側肢のみrelaxationすると,対側肢では張力曲線の上昇が見られ,対側への抑制作用がとれたために張力が増加したのではないかと推察された.
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