体育・スポーツ場面において、高い競技パフォーマンスを達成する上で重要な要因となっている能動的注意能力を、呼攻、心拍、事象関連脳電位などの精神生理学的指標を用いて、至適注意力とそのメカニズムについて明らかにすることを目的に、本年度では認知機能との関連で、これまでは主として心理学的概念として論じられてき注意能力に関する文献学的検討と基礎的な実験を行った。 心理学や認知科学におけるヒトの注意に関する心理活動や情報処理学的観点からの取り扱われ方について、MEDLINE、ERIC、PSYCHOINFO、SPORTDISCUSなどのデ←タベースや、体育学研究、スポーツ心理学研究、心理学評論などの文献から注意能力の概念を明らかにし、スポーツ選手用の注意スタイルテストを作成し、サッカー、テニス、バスケット、バレーボールなどの球技種目の選手(317名)に実施した。多変量解析の結果、スポーツ選手特有の注意スタイルとして、分割的注意能力、内的注意能力、広い注意、狭い注意などを含む6軸を見出した。さらに、この結果を集中力の持続といった注意のメカニムの Phasic的側面とパフォーマンスとの関連から、長野での冬季オリンピック選手のメンタルマネジメントの一部として紹介する機会を得た。 また、注意機能の精神生理学的検討として、マルチテレメータをもとに呼吸、心拍などの生理学的情報を、テニスの試合場面で検出を行った。その結果、サービス時、レシ-ブ時といった注意のTonic的側面が正弦波状の呼吸曲線に反映されることを見出した。 本年度のこれらの成果をもとに、次年度は注意力向上のためのバイオフィードバック技法の適用可能性についての検討を行う。
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