本研究においては、体育・スポーツ場面において、高い競技パフォーマンスを達成する上で重要な要因となっている能動的注意能力を、事象関連脳電位を用いて至適注意カとそのメカニズムに関する研究を行った。注意力は認知機能との関連で、これまでは主として心理学的概念として論じられてきたが、各種の事象関連電位の研究によりようやく実証的操作による検証が可能となったといえる。 本研究では、まず最初にヒトの注意に関する認知心理学や情報処理学的観点からの取り扱われ方について文献の収集・検討を行い、注意能力の概念を明確にした後、質問紙を作成し注意構造の分析を行った。 次に、精神性理学的アプローチにより注意機能の周期性の検討、さらに事象関連脳電位を用い、Tonic、Phasicといった注意力の二つの側面の精神生理学的メカニズムの検討を行った。ここでは、注意能力を“ある対象への精神の集中"と捉え、覚醒水準とそれに影響を与える心理的要因を分析する上から、競技場面に限定せず抽象化した事態での実験的研究を行った。 最後に、試合といった実際の競技場面での生理的、心理的変化の実験結果と、“あがり"といった情動面と注意力の関係を捉えた調査結果に基づき、運動パフォーマンスを高めるためのEMGバイオフィードバック技法の適用による注意力向上トレーニングの検討を行った。
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