本年度の研究計画では、アメリカと日本の体育・スポーツ関連の訴訟は、どのような傾向にあるか、そして、とくにスポーツ参加に関する事例はいかなるものに分類できるかを検討することであった。以下にその概要を述べる。 アメリカのスポーツ法の著書及びスポーツ法雑誌、体育・スポーツの判例雑誌などの検討から、従来アメリカにおいては、スポーツの事故に関する訴訟が圧倒的であった。しかし、概ね70年代からスポーツ参加に関する事例が取り上げられてきた。それらは、女性、障害者、人種などを理由とした参加制限に対する訴えである。なかでも80年以降はHIV感染者を含んで障害を持つ者の参加機会に関する事例が注目されている。また、最近のスポーツの重要問題を反映して、ド-ピングを巡る訴えやアマ・プロを問わず契約関連の訴訟も現れている。 日本については昭和28年創刊の判例雑誌(判例時報)から検討する限り、やはり事故の損害賠償の訴えが多い。体育・スポーツに関係する用語の入った事例をすべて取り上げた場合は約半数が事故問題であった。アメリカのようなスポーツ参加に関する訴えは、今日まで大変少ないと言える。その一方、ゴルフを主とした会員権に関する事例は今日的問題として、あるいは日本の特異な事例として多く取り上げられている。但し、日米どちらの事例においても雑誌などの掲載回数は注目度は表していても、絶対的な数を表していない点には注意する必要がある。今後は分類した事例の具体的内容を検討することとする。
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