昨年度のリズミカルなbody contact(背中をなでる)の実験結果から、仕手-受け手ともに気分(POMS)は多くの項目で低下し、リラックスの傾向を示すと共にプリファードテンポも緩やかとなることが示された。今年度はこれらの実験に加えて、仕手がさまざまな条件をイメージしながら受け手に触れる場合、また、一定のボディワークを自分で行う場合と他者にしてもらう場合におけるパーソナルスペースの変化について女子大学生を対象として検討した。その結果、仕手のイメージが仕手自身の身体に関係する(からだが温かい、冷たい、軽い、重いなど)場合よりも、受け手に関係する(受け手がリラックスするように)場合の方が受け手の気分(UMACL)はより安定し、自律神経活動(R-R)も副交感系の興奮が示唆された。さらに、自分でリラックス運動をするよりも他者の手によって行われる方がリラックス感は増大した。ただ、リラックス感が大きい場合でも、パーソナルスペースはより小さくなる者と大きくなる者とがあり、小さくなった者は「ボディワークで気分がよくなり、人に近づかれても平気になった」と述べ、大きくなった者は「気分がよくなったので、自分の空間をのびのびと大きく取りたかった」と述べている。今後の興味ある検討課題と思われた。 現在は関西医科大学の心療内科において、摂食障害(過食症)患者のグループワークにボディワークを取り入れているので、その効果などについても調査結果等から考察を進めている。他者との関係やふれあいを極度に避ける傾向のある患者でも、数回のセッションで他者を受け入れ、交流することの意味を感じるようになると思われる。
|