【目的】我々は以前より、重篤な麻酔や全身合併症のない中高年の整形外科的症例を対象として、大学公開講座としての水中運動教室を開催し、指導している。それらの症例に及ぼす、温水プールを用いた水中運動療法の影響について、本年度までに行われた研究実績をもとに概要を報告する。【方法】対象は、腰痛疾患群30例(平均48.0歳)、下肢変形性関節症(OA)群19例(平均49.9歳)、慢性関節リウマチ(RA)群13例(平均47.2歳)、骨粗鬆症群10例(平均56.3歳)の計72例とする。水中運動教室は各疾患別基礎教育、基礎的水中運動、泳法指導、自由泳より成り、週2回、平均約5.9カ月間実施した。とくに基礎的水中運動、泳法指導においては、各疾患別運動処方プログラムに基づき、可及的に個別の運動処方を施行した。教室実施前後に、各種の測定・検査(体脂肪率、ロ-レル指数、最大酸素摂取量、無酸素性作業能力、肺活量、背筋力、膝屈伸力、立位体前屈、上体そらし、各疾患別日整会判定、Lansbury指数評価、腰椎骨塩濃度計測など)を行い、比較検討を加えた。【結果】腰痛群およびOA群においては、肥満の軽減・心肺機能の向上・体幹下肢の筋力と柔軟性の増大・日整会判定上の点数改善が、またRA群では、体幹下肢の筋力と柔軟性の向上・Lansbury活動性指数と日整会リウマチ膝判定上の改善が、水中リハビリテーション後にそれぞれ統計学的に有意に観察された。骨粗鬆症群の腰椎骨塩濃度測定においては、水中運動療法後では微増を示し、骨量の低下は阻止されていた。【結論と展開】水の浮力と抵抗を用いた温水中の運動療法は、上記の整形外科的症例に対して有用と考えられた。今後はさらに例数を増やし、各疾患別に最適な水中運動処方プログラムの完成をめざすと同時に、とくに全身の各部位別にみた水中運動の骨量に及ぼす影響についても攻究したい。
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