【目的】我々は、中高年の整形外科的症例を対象として、水中運動教室(大学公開講座)を開催し指導している。それらの症例に及ぼす、温水プールを用いた水中運動療法の影響について概要を報告する。【方法】今年度に、解析の対象となった症例は、腰痛疾患、変形性膝関節症を有する40例(男性19例、女性21例、平均年齢56.2歳)である。1群は水流発生装置を用いずに水中運動を実施する群(水中運動単独群)とし、他の群は水流発生装置を用いて水中運動を施行する群(水流併用群)とした。水中運動教室は各疾患別基礎教育、基礎的水中運動、泳法指導、自由泳より成り、週2回、平均約16週間実施した。基礎的水中運動、泳法指導においては、各疾患別運動処方プログラムに基づき、可及的に個別の運動処方を施行した。水流併用群においては、平均0.9m/秒の流速を常時発生させた状態とした。両群における教室実施前後に、各種の測定・検査(体脂肪率、最大酸素摂取量、肺活量、背筋力、膝屈伸力、立位体前屈、上体そらし、日本整形外科学会各疾患別判定など)を行い、比較検討した。【結果】水中運動単独群では、体重・ローレル指数の軽減、膝伸展力・立位体前屈・上体そらしの向上、腰痛症状(日常生活動作、総点のみ)・膝関節症状(疼痛歩行能、総点のみ)の改善が、統計学的に有意に観察された。水流併用群では、それらの有意な改善に加えてさらに、体脂肪率の軽減、最大酸素摂取量・肺活量・背筋力、膝屈曲力の向上、腰痛症状(自覚症状、他覚所見)・膝関節症状(疼痛階段昇降能、屈曲角度)の改善が認められた。【結論】水流発生下に水中運動を行った場合、非流水下水中運動時と比較して、肥満の軽減、心肺機能の向上、筋力増強、腰痛・膝関節症状の改善などの効果が、より強く発現する傾向が観察された。上記の効果には、流水の抵抗やマッサージ作用、渦流から発生した超音波温熱効果などが関与する可能性が推測された。
|