約2カ月間の有酸素運動が精神状態と免疫能に及ぼす影響を日頃運動不足気味の対象集団において実験的に検討した。精神状態への影響は不安と抑欝の低減を主として認められた。THI(東大式健康調査票)を用いた検討では変化はあまり大きくなかったが、身体的愁訴や精神的愁訴は減少方向に変化する傾向にあった。免疫能の指標としたNK活性には有意な変化はみられなかった。好ましい方向への精神影響は出席状況のよい群で大きく認められた。 視聴覚刺激による情動操作と精神状態および免疫能の変化に関する実験も学生被験者を対象として実施した。楽しく笑える場面を集めた愉快な刺激と不快な衝撃場面を集めた不快刺激との2種のビデオ刺激を編集作成し、刺激前後の心理テスト採血により精神状態と免疫系指標の変動を測定・評価した。諸変化と個人の性格・行動型との関係も検討した。蓄積データを解析して研究成果の一部を学会報告した。 蓄積データでは心理テスト等で評価したところ、情動操作は所期の目的を十分に果たしていなかった。しかし、心理テスト尺度の変化相互および免疫系の指標の変化相互には種々の関連性が認められた。NK活性の変化とリンパ球サブセットの変動には関連性が認められた。総合的に被験者の緊張が増したと思われる事態で、NK活性の低下とCD4/CD8比の上昇がみられた。 改良した刺激を用いた実験を行ってさらに検討を続けている。
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