研究概要 |
慢性疾患羅患高齢者662名(男性325名, 女性337名)を対象に、こころの健康状態とそれに関連する心理社会的要因を質問紙調査によって調べた。併せて、高齢者48名(男性23名, 女性25)に9ヶ月の身体活動を実施させて、身体活動が精神的健康の改善に及ぼす影響を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。 1)GHQ総得点の平均値と標準偏差は男性で5.84±5.81点,女性で7.44±5.41点であった。身体的症状、不安と不眠、うつ状態の3要素スケール及びGHQ総得点で、女性の方が男性よりも有意に高得点であった。 2)カットオフポイントを6/7点間に置き、7点以上の神経症傾向にある要注意群の割合を算出してみると,男性では34.2%(111人),女性では51.0%(172人)が神経症傾向にある要注意群と判定された。 3)慢性疾患羅患高齢者のGHQに関連する要因をその関連の強さや相対的な関連性を考慮して明らかにするために、重回帰分析を用いて分析した。その結果、男性においては年収, 受医療頻度, 慢性疾患の影響度, ストレス影響度, ADLの5要因が選択された。その重相関係数はR=0.623(R^2=0.388)であった。 4)女性のおいては、年齢、配偶者の有無、受医療頻度、慢性疾患の影響度、ストレス影響度、ADL、友人のPSSと家族のNSSの8要因がGHQに対して有意な関連を示した。重相関係数はR=0.604(R^2=0.365)であった。 5)9ヶ月の身体活動は「直情径行性」,「情緒不安定」, 「抑うつ性」, 「神経質」の有意な改善を引き出した。 6)身体活動(運動)実施頻度はADLや身体的健康の改善と共に精神的健康の改善に有意に影響する要因であった。
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