1. 高齢者の日常生活動作の遂行能力と下肢筋出力レベルとの関係を検討するために、60歳以上の男女426名について、脚伸展パワー・脚伸展筋力と日常生活動作の遂行レベル、転倒の有無について測定・調査した。 (1) 脚伸展パワー(両脚)が男性では14W/kg、女性では9W/kg、脚伸展筋力では同1.0kg/kg、0.8kg/kgより高ければ、通常の日常生活動作を支障なく遂行できるものと思われた。 (2) 体力レベルの高い高齢者の場合、下肢筋群の筋出力が高い者にも転倒が見られることから、この群では筋出力レベルが一義的に"転倒"に影響しているわけではないものと思われる。 2. "椅子からの立ち上がり"動作に関して、体力レベルの高い在宅高齢者5名と、老人保健施設に居住する高齢者30名について映像解析による分析を行い、体力レベルと動作特性の関連について検討した。 (1) 立ち上がり動作時の体幹の前傾角度、股関節屈曲角度、膝関節屈曲角度は体力レベルの低い群の方がいずれも大きかった。体力レベルの高い群の値は若年者とほぼ同じであり、加齢の影響はなかった。 (2) 脚伸展筋力と(1)の動作特性には関連が見られ、また脚伸展筋力レベルが低い者ほどより低い椅子からの立ち上がり動作の遂行が困難であった。 (3) 老人保健施設の群では、歩行速度と脚伸展筋力、ステッピングの成績などが関連していたが、立位姿勢での足圧中心動揺とは明確な関連は見られなかった。 今後、老人保健施設でのデータの解析を進め、当該施設での運動プログラムとの関連などについて検討を進める予定である。
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