研究概要 |
棒高跳びの記録向上には競技者の技量に加え,ポールの素材やポール性能(特性)が大きく影響しているため,棒高跳びの跳躍テクニックにはポールの材料特性を精確に把握することが必要となっている.すなわち現今のポールは極めて大きな変形を示すものであり,従来のように跳躍者の訓練によってポールの大たわみ変形特性を体験的に知るだけでは効果的な記録向上に結びつかいないため,工学的視点からポールの有する変形特性を調べ,高く跳ぶために如何に効率的に人間機能を発揮させるかの研究が重要となっている.本研究では,跳躍者が備えている能力(助走力:初期水平方向速度,ジャンプ:初期垂直方向速度),体重およびポール(長さおよび剛性)などが,跳躍高さに及ぼす影響について検討を加えたものである.ポールの解析においては,実際上のポール負荷条件を十分考慮し,跳躍者の右手と左手の保持部分に相当する二点に二つの集中荷重を作用させた場合のポール大変形について微分幾何学上厳密な式を適用して非線形解析した.さらに,跳躍者の運動については跳躍者を質点とする簡単なモデルを構築し,跳躍高さに及ぼすポール性能(長さ,剛性),跳躍者能力(走力等)などの影響を動力学的に解析した.また,これまで考慮されなかったポールの状態,すなわちポールを反転する状態までをも含め,動力学的に解析した.その結果,最高の跳躍高さ獲得に最適なポール(長さおよび剛性)を選択する目安や,ポール操作のテクニックについて新たな知見を得ることができた.
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