中間疾走中の筋活動を明らかにするため、男子短距離選手5名に、全天候型走路で全力疾走を行わせ、走路に埋設したフォースプレートによって地面反力を計測するとともに、疾走フォームを側方30mの地点から200コマ/秒の高速度デジタルビデオカメラで撮影した。走行中の右下肢8筋の筋電図(大殿筋、股関節屈筋、大腿直筋、外側広筋、大腿二頭筋、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋)を双極の表面電極を用いてテレメータ法で記録した。これらのデータを基に、下肢関節の筋モーメントと筋鍵複合体の長さを算出し、以下のことが明らかとなった。1.接地期後半に股関節屈筋は、伸張性筋活動をしながら股関節屈曲トルクを発揮していた。これはキック後に脚が後方に流れることを防ぐために働いたものと考えられる。2.スイング期前半では、大腿直筋が伸張性筋活動によって、股関節屈曲と膝関節伸展のトルクを発揮していた。この局面では股関節屈曲動作による関節間力で膝関節に屈曲動作が生じていたが、この膝関節伸展トルクはその屈曲速度を調整するために拮抗的に働いたものと考えられる。3.スイング期後半では、大腿二頭筋が伸張-短縮の収縮を行っており、股関節伸展と膝関節屈曲に働いた。この局面では、膝関節は伸展動作示し、外側広筋は短縮性収縮を行い、大腿二頭筋と拮抗して着地に備えての膝関節角度の調整を行っているものと考えられる。4.前脛骨筋はスイング期にほぼ等尺性収縮の筋活動を行い、足関節の関節間力によって生じた足底屈トルクを打ち消す働きをしていると考えられる。
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