本研究ではポリティカル・エコロジー論、脆弱性論に関する出版物の収集を行う一方、ポリティカル・エコロジー論者との研究交流を通じ、最近の第三世界ポリティカル・エコロジー論の研究動向を調査した。その研究の成果として、論文「新しいアフリカ農村研究の可能性を求めて-ボリティカル・エコロジー論との交差から-」(アジア経済研究所:1999年)をとりまとめた。 この論文では、アフリカの農民が環境の変化や社会経済的変化に晒されることによって脆弱性を増大させ、それによる危機を回避するために彼らはエンタイトルメントに結びつく様々なチャンネル(アクセス・チャンネル)の獲得をめぐって休みのない働きかけ(「闘争」)を行っていることを明らかにした。 これは、第三世界のポリティカル・エコロジー論で展開されている脆弱性論が、新しいアフリカ農民像の提示、さらにはアフリカの農村・農業研究にとって新しい研究視点を提供する可能性をも示唆するものであり、脆弱性論がアフリカの農業危機の研究にとって重要な意味を持っていることを明らかにし得たものである。
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