経済の不況期になると、資金は大都市に集積して統合化が進む。現在、金融不況によって、東京・大阪をはじめとして大規模都市に資金が集中し、金融機能による都市システムは変容しつつある。 微視的に都市内部地域をみると、金融機関のより効率化の追求のために、廃止店舗も目立つようになり、経済成長の停滞により、金融機関店舗網も変化している。 金融のグローバル化が急速に進んでいるが、東京都心部ではオフィスの賃貸料の高騰によって、かつての好況期には外国銀行の立地は都心部からの分散傾向にあった。しかし、経済不況期に突入することにより、外国銀行の都心部への再度の立地集中が顕著になるという傾向が生じている。一方、邦銀の外国支店の撤廃も生起して、日本を中心にしてグローバルな観点によっても銀行店舗網もわずかずつ変容している。 上述のように、国家都市システムにおいて金融機関から考察すると、広域中心都市(例として、仙台、金沢、広島など)や地方中心都市(例として、水戸、前橋、富山など)には、周辺部から資金が集中する。しかし、その他の地域では、資金が欠如して、諸産業が伸び悩むために、都市成長が停滞する。したがって、経済の不況期においては、国家都市システムは変わりつつあるとともに、それぞれの都市圏内の様相も変化している。 大都市内部の街区の変容として、東京都千代田区神田和泉町を事例として調査し、その結果が「フランス地理学評論」に掲載された。微視的にみると、金融機関は大通りに面した容積率の高いところに立地し、その背後には居住機能とともに諸種の機能が混在していることが解明された。
|