本申請研究は経済的中枢管理機能という高次都市機能の分析を通して、発展途上国の都市体系を研究することを目的としていた。本研究は具体的には、フィリピン・インドネシア・タイ・インド・サウジアラビア・エジプト・モロッコ・ナイジェリア・南アフリカ共和国・ブラジル・メキシコを取りあげている。ここでいう都市体系とは経済的中枢管理機能(主要企業の本社、支所)のあり様からとらえた、主要都市の都市間結合の状況を意味している。また、その結果を日本をはじめとして、申請者が既に分析を終了している先進国(韓国・西ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ合衆国)の結果と比較検討することも研究の目的としている。 一般に発展途上国においては、首位都市の卓越が著しいことが指摘されている。今回の研究においてもその点は概して指摘された。ただし、首位都市が首都の場合と首都以外の場合に二分され、後者には、インド・ナイジェリア・南アフリカ共和国・ブラジルが該当した。ナイジェリアとブラジルは首都の歴史が新しいことも関係している。南アフリカ共和国は首都はプレトリアであるが、ここにおかれているのは政府であって、ケープタウンが立法上の首都であり議会が置かれている。発展途上国の都市体系は首位都市を圧倒的な中心とするものが多く、首位都市を除くとその結合は弱いものであった。首位都市の卓越度が小さい国は多くが連邦制国家であり、政体が都市体系の状況に関係していることも明らかとなった。
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