本年度は、準備作業の継続として、オルテリウス『世界の舞台』、メルカトル『アトラス』を始めとする近世アトラスの諸版を調査した。すでにファクシミリで刊行されているラテン語初版や英語版などを購入あるいは閲覧して、各地図帳の内容を詳細に検討し、あるいは国立国会図書館、国土地理院、神戸市立博物館をはじめとする、国内各地の図書館・博物館が所蔵するドイツ語、フランス語版等の諸版もできる限り閲覧して、それぞれの収録図を複写した。 これらの結果を研究補助者により、分類・整理し、図版用ファイルにまとめる作業を行なった。その上で各アトラスの異同を比較するだけでなく、オルテリウス、メルカトルの宇宙像・世界像から、その後のアトラス編集者の世界像への変遷過程をたどることを追究した。また、最新の欧米地図史に関する文献を図書および複写の形で収集することにも努めている。 なお、神戸市立博物館、江戸東京博物館などにおいて近世日本の地図帳類を調査し、ヨーロッパの近世アトラスとの比較を試みつつある。この一環として、平成10年10月に東京において、欧米の地図史研究者とアトラスに関する研究打合せ会を開催した。
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