本年度は、昨年度に引続きオルテリウス『世界劇場』やメルカトル『アトラス』をはじめとする近世アトラスの諸版の補足的調査を行い、さらには国内各地の図書館・博物館が所蔵するドイツ語、フランス語版等の諸版もできる限り閲覧して、それぞれの収録図を撮影するように努めた。これらの結果を研究補助者により、分類・整理し、図版用ファイルにまとめている。 この上で各アトラスの異同を比較するだけでなく、オルテリウス、メルカトルなどアトラス編纂者の宇宙像・世界像や、その後のアトラス収録地図の変遷過程をたどった。さらにこれら近代アトラスの原点ともいうべき、ローマ時代のプトレマイオス『地理学』所収の復元地図集を古代アトラスと位置付け、その近世における復活と変容について考察した。 こうした成果の一部をギリシャのアテネで開催された国際地図史学会で報告し、近世のヨーロッパと日本における地図帳の意味を問いかけた。最終年度に当たるため、年度末には総合的な研究成果を、『アトラスの思想』として公刊した。
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