本研究の目的は、北海道移住が先行した海外移民送出地域での初期移民の送出過程、ならびに当該地域における移住地転換(北海道→海外)の解明にある。研究2年目の平成10年度も引き続き、北海道移住が先行した海外移民送出県を中心に、北海道移民および海外移民送出地域の地域分析や移民の社会属性分析に不可欠な北海道移住者名簿などの一次資料の収集・整理を行った。移住者名簿等の収集作業にあたっては、北海道立文書館をはじめ、福島県立博物館、米沢市立図書館、京都府立総合資料館、滋賀県庁、熊本県立博物館、広島県立図書館、広島市公文書館などの関係機関を中心に、写真撮影による資料収集を行い、収集資料のデータベース化を研究協力者による研究補助のもとに進めている。また、これに併せて、北海道および北海道移住者送出県(徳島県・熊本県など)において明治・大正期に発行されていた新聞各紙に掲載された北海道移住関連記事についての収集も行い、これについてもデータベース化を進めている。本年度は、これらの成果の予察的考察として、「蝦夷地・北海道をめぐる植民史」 (足利健亮編『アジア世界の歴史地図 第5巻 移動』朝倉書店、1999年発行予定)を執筆した。 平成11年度はこれらの移住者データベースをもとに、北海道移民と海外移民の出身地域が重層し、同一資料での移民出身階層の比較研究が可能であることが判明した山口県熊毛郡および広島県の旧安佐郡戸坂村(広島市)を例に、移住地転換プロセスの解明を行う予定である。また、これまで蓄積できた研究成果については平成11年6月に開催される歴史地理学会大会(於:立命館大学)および平成11年度日本地理学会秋季学術大会(於:四国大学)において発表し、研究報告書としてまとめる予定である。
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