本研究の目的は、北海道移住が先行した海外移民送出地域における初期移民の創出過程、ならびに当該地域における移住地転換(北海道→海外)の解明にある。研究3年目の平成11年度も、北海道移住が先行した海外移民送出県を中心に、移民送出地域の地域分析や社会分析に不可欠な資料の収集を広島県立図書館、広島市公文書館、愛媛県立図書館、香川県立図書館などの関係機関を中心に行い、各種統計や収集資料のデータベース化を研究協力者による研究援助のもとに進めた。 この中ではとくに、北海道移民と海外移民の出身地が重層し、同一補料での移民出身階層の比較可能な地区についての分析を行った結果、北海道移民の出身階層は自小作層を中心としているものの、海外移民の出身階層は時代別に差異(幅)があること、当時(明治20年前後)の行政側の強い指導や移民誘導政策も移住地転換に寄与したことなどか判明した。これらの研究成果については、「北海道移民にみる連鎖移住と空間移動」(比較家族史学会第36回研究大会、1999年10月24日、九州大学国際交流センター)、および「北海道移民と海外移民の送出地域とその社会階層」(1999年度人文地理学会大会、1999年11月21日、奈良大学)と題して学会発表を行った。 また、昨年度に引き続き、北海道および北海道移住者送出県(徳島県・広島県など)において明治・大正期に発行されていた新聞各紙に掲載された北海道移住関連記事や、関係市町村が発行した自治体史などからの北海道・海外移民に関するデータについての収集も行い、これらの一部につてもデータベース化を進めている。なお、本年度は本課題による研究最終年度にあたり、これまでの研究成果を研究報告書(冊子体)としてまとめている。
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