地球規模で社会経済・政治・文化構造が大きく変化する中で、これまでとは異なる地域的枠組みや行財政システムによる国土空間構造の構築が求められている。地域連携に基づく連携型大都市や大都市圏は、そうした視点からの新しい地域的枠組み構築の一つといえる。本年度はかかる連携型空間構造を見出すべく、群馬、新潟、長野、福島、東京大都市圏、京阪神大都市圏などで、主として企画部門の行政担当者への聞き取り調査や資料収集、現地踏査を行った。成果の概要は以下の通りである。 1) 京阪神大都市圏では階層的ネットワーク構造から水平的ネットワーク構造への転換が進み、各都市の自立化が見られる。そうした過程において大都市内部でも、中心核を持つ自立的地域が複数形成されそれらが相互にネットワークしはじめてきている。かかる大都市における分都市化は、従来の大都市周辺部の衛星都市の自立化と相まって、行政界を意識しない同格的な水平ネットワークを押し進めてきた。 2) 分都市化の概念は、大都市及び大都市圏研究に新たなインパクトを与えるだけでなく、21世紀のまちづくりなど、今後の都市政策に寄与するものと考える。 3) 1998年3月の『新・全国総合開発計画』をうけ、1998年夏には新しい首都圏整備計画が策定された。そこでは首都圏各地域を自立化させ、従来の階層的ネットワーク構造から水平的ネットワーク構造へ転換することが主張されている。しかし、現実には東京一極集中が進み、前橋・高崎、宇都宮、水戸など北関東の拠点都市の中心性は低下し、上記都市など周辺都市相互の連携は進まない。その大きな要因は、東京からの放射軸は流通・情報軸となっているのに、横への環状軸は生産軸で、相互に部品供給をするに過ぎず、都市相互間の補完関係及び都市の個性創出も十分に発揮できないでいることが大きいと考える。
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