地球規模で社会経済・政治・文化構造が大きく変化する中で、これまでとは異なる地域的枠組みや行財政システムによる国土空間構造の構築が求められている。地域連携に基づく連携型大都市や大都市圏は、そうした視点からの新しい地域的枠組み構築の一つといえる。本年度はかかる連携型空間構造を見出すべく、群馬、栃木、山梨、長野、岩手、山形、東京大都市圏、京阪神大都市圏などで、主として企画部門の行攻担当者への聞き取り調査や資料収集、現地踏査を行った。成果の概要は以下の通りである。 1)社会構造や都市構造的視点から見ると、大都市圏域では中心地構造が階層的ネットワーク構造から水平的ネットワーク構造へと転換しつつある。同時に大都市内部でも自立的多核化(分都市化)が見られ、それらが相互に行政界を意識しない同格的なネットワークをはじめている。 2)水平ネットワーク時代には、新しい行動原理を基本にした都市や大都市圏の枠組みを構築する必要性があるため、その試案を群馬・滋賀などで考察した。時代に対応した枠組みづくりには市町村の合併が一番効率的である。しかし、情報化や高速交通化など科学技術の発達や社会全体の動きに人間が精神的に対応しきれず、多くの面でミスマッチが生じており、既存自治体を生かした連携型が当面最良と考える。 3)『新・全国総合開発計画』や首都圏整備計画でも首都圏各地域の自立化と水平的ネットワーク化がいわれるが、現実には東京一極集中が進み、北関東の拠点都市の中心性は低下しつつある。首都機能移転先候補地の栃木・福島と岐阜・愛知の両地区を中山道軸で結節した東京をバイパスする東西ルートの活性化によって、宇都宮や前橋・高崎、諏訪湖地域など新たな地域連携に基づく連携型大都市や大都市圏の構築ができ、他方で東京の再整備も進むものと考える。
|