研究概要 |
最終年度は,戦前の岐阜県における町村営電気事業の展開過程を明らかにするために,残存する行政資料の収集を精力的に進めるとともに,岐阜県の隣接地域における電気導入の時期を把握するために岐阜県内の未収集分も含め『市町村史』等関係資料の収集を進めた。また,これまでに加子母村,旧駄知町,明智町,旧福地村の町村営電気事業に関する行政資料の収集を終えているが,これらに加えて本年度は,新たに東白川村及び宮村の2村において村営電気事業創業に関わる資料の存在を確認し,収集した。両村の資料には,村営電気事業創業に当たっての創業資金の造成に際して,行政,住民がどのように分担し合ったのかを解明することを可能とする貴重な資料が含まれており,地域の主体性に基づき社会資本整備を進めた大正時代の村々の様子を解明するのにかなり有力な手がかりとなりそうである。 3年度にわたる調査研究による研究の成果は,今後,資料の分析を進めて公表していく予定であるが,全国の町村営電気事業のおよそ30%が集中していた岐阜県における町村営電気事業には,多様性が存在していたことがこれまでの調査研究から判明した。明智町は製糸業の発展と,旧駄知町は窯業の発展との関係が明確である。その一方,旧福地村や東白川村,宮村などでは戦前の地主・小作関係下における地域振興過程における両者の役割を解明していくことが必要と認識した。このことから,地域特性との関連,地域構造との関連から町村営電気事業の展開過程について究明していくことの必要性が資料収集過程において認識され,必ずしも明らかにされていない戦前の町村営電気事業の存在形態とその構造を解明するのに有効な研究となるものと思われる。
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