大都市圏が構造変化し、多核化しつつあるという見解に関しては、地域構造を考える立場とも関わって評価も分かれている。アメリカにおける郊外都心形成に対し、日本では多核化について明確な論証は示されていない。その理由は、郊外における経済活動の発展、郊外間の結合の増加にも関わらず、強力な都心ならびに都心を中心とする求心的構造の存在が大きい点にある。経済活動と生活行動の二つの側面から検討した場合、日本は生活行動面のみの多核化なのである。こうした状況の研究を進めるため、まず、典型的な多核化とされるアトランタについて、CBDならびに郊外都心におけるオフィス開発の動向、CBDからのオフィス移転の状況を検討した。その結果、CBDとその北のミッドタウン地区にかけて拡散的な都心機能の立地が見られ、これは旧来のCBDとことなり、低密度の郊外都心と同様のタイプの都心地域の形成とみなしうるのではないかと考えた。また、東京・大阪大都市圏の最近の動向を、通勤流動、購買行動に関して分析し、東京における都心通勤者の実数の減少、大阪都心の購買率減少などについて検討を加えた。東京都心のオフィス活動も再編期を迎えている。神奈川における郊外商業地区の急成長でも自動車による拡散的な流動のシェア増加が顕著であり、都心中心の求心的構造だけで現在の大都市圏という生活空間は説明できず、郊外間流動がつくる地域構造の解明が欠かせないことを示した。この拡散的で相互流動からなる地域構造は、経済中枢の立地と結合関係、需要指向の立地と生活行動の両側面での違いはあるが、先のアトランタの動向と共通するものである。分散的・水平的な多核化への接近が求められる。さらにそこから次ぎのような共通する課題が明らかとなった。郊外集積のあり方を、相互流動、機能分担のあり方とともに検討すること、郊外間流動の解明とそれをささえる交通体系の検討などである。
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