1. アトランタを事例として多核的構造の背景となる社会経済的状況を考察した。歴史的な形成、オリンピックで顕在化した都市問題、社会的な都市構造や雇用分布の検討などから、郊外の独立説に対する疑問を提示した。この説は、社会的な分極化の空間的な固定化をすすめ、社会的な交流を閉ざすものである。 2. 多核化したアトランタ大都市圏における郊外核の内部構造を検討した。また、郊外核・郊外都心形成の鍵を握るオフィス立地の動向についても、都市圏多核化との関連からレビューを行った。その結果、郊外都心、旧来の都心であるCBDともに、オフィスビルの巨大化(オフィスタワー化)により自動車指向の施設立地となりつつあり、低密度で分散的な内部構造への変化がみられ、多核化の複線的な発展形態を整理する上で重要な鍵となる。 3. 日本の大都市圏については、分析が不十分な90年代の資料を収集し、東京ならびに京阪神大都市圏について生活行動の検討を行った。バブル以後の経済状況の下とはいえ、従来見られなかった都心通勤者の実数減、都心商業の閉塞状況、車商圏の顕著な成長などがそこから示された。 4. 郊外における企業間連関について検討した。従来、郊外には大規模な分工場が多く域内の連関は弱いとされてきたが、そうした傾向に変化が見られること、郊外の産業集積の多様な形態が明らかとなった。 以上から、日本でも、公共交通がささえる、都心を中心とする大都市圏という構造に加えて、自動車がささえる郊外間流動という地域構造がオーバーラップした状況が読みとれる。これはアメリカの相互流動的な多核化と同様のものと考えられる。また郊外核と同様の分散的な構造に、CBDの内部構造(性格には周辺の再開発による地区も含め)が変化する傾向にあり、車指向の分散的構造がミクロにも展開していることが示された。
|