日本の近代化の過程で、工業は都市発展の原動力として重要な役割を担い続けてきた。しかし、高度経済成長期以後、工業の急成長とともに都市の自然環境、土地利用システムは大きく変化している。また、近年、経済環境が激しく変化する中で、工業の海外移転とそれによる工業空洞化が進み、地域の経済・社会に大きな影響を及ぼしている。新しい世紀を前にして日本の工業と地域システムの再構築が迫られている現在、都市の環境変化を工業動向と結びつけて動態的に捕らえることの意義は大きい。これまで筆者は大都市の工業集積について研究を重ねてきた。本研究において筆者は、わが国における最大の工業集積を示す東京大都市地域の確信をなす城南地区に焦点を当て、詳細な実態調査からその大都市地域、さらに全国における役割について究明した。第2に、対象地域を広げ、産業構造が変化し、情報化が進む中で東京湾を巡る地域の再構成と活性化について分析した。それにより、東京湾岸地域における城南地域の役割もより鮮明になる。これと平行して、ヨーロッパの工業地域との比較研究を行った。まず、その第1歩として、ハンガリーの首都であるブダペストとの比較分析を行った。大都市地域における研究手法を適用して、四国、北九州、および沖縄などについて工業変動と環境変化について多様な社会・経済条件に配慮しながら分析をかさねた。これら、一連の研究によって、工業変動が様々なスケールの都市において環境変化をもたらしながら展開している実態を明らかにした。今後、さらに東京都それ以外の大都市の内部と周辺部、および、今回対象とすることが出来なかった地方の都市についての分析を重ねていく必要がある。
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