本研究は、大都市圏における多核化の動向と、より規模の小さい都市圏における郊外化の次の段階と考えられる空間構造変容の兆候を検証することにある。 分析の結果、第一に本研究のために設定したほとんどの都市圏において、中心市よりも郊外地域での変化が激しく、人工の郊外化とともに雇用の郊外化も進展し、この20数年で郊外地域の社会経済的特性が大きく変化したことが示された。また第二に、都市圏規模500万人以上の4つの大都市圏をとりあげ、この20数年のオフィス及び店舗従業者数の距離帯内における空間分布パターンの変化を、メッシュデータを用いて分析し結果、4つの大都市圏すべてにおいて、中心帯よりも中間帯および外緑帯でオフィス従業者ならびに店舗従業者の増加が大きいことと、より規模の大きな東京圏・大阪圏では中間帯および外緑帯の空間分布パターンが分散から複数の核集中へ向かっていることと、中規模の名古屋圏では中間帯で同様なパターンがみられ、ともにCBD域に比べると小規模ではあるが複数の郊外核が成長、していること、より小規模な福岡圏では郊外核形成の兆しが不十分であることが検証された。 また郊外核と都心および副都心との特性の比較を行うために、大阪圏北郊の二つの郊外核「吹田市江坂地区」「千里中央地区」と都心域及び副都心域の間で、事業所統計およびパーソントリップ調査のデータを用いて、就業構造と通勤目的および商業・サービス業立地と関係の深い自由目的におけるトリップパターンを分析した。その結果、郊外地域と都心および副都心との特性の違いは依然大きいが、郊外核との比較ではその特性におきな違いはみられず、違いの原因は都市圏内における空間的位置の差から脈生するものと、その規模によるところがほとんどであることが明らかとなった。
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