本研究は、イギリスにおける第2次世界大戦以降の地域政策の展開過程と小売商業の開発・小売商業の地域システムの動向について考察することを目的としたものである。主要な研究結果は、次のように要約される。 1. 第2次世界大戦以降から1970年代では、既存の小売商業地区の階層的な地域システムを存続・強化する地域政策が実施され、小売商業施設の開発はタウンセンターなどの小売商業地の再生化をめざした事業を中心に展開してきたのに対して、郊外地域での小売商業の開発は、計画的規制によって大きな進展はみられなかった。 2. 地域計画に関する立地制限的な諸規制が緩和された1980年代になると、郊外型ショッピングセンター、スーパーストアなどの郊外型小売商業施設は急速な発展をみることとなり、その結果小売商業の離心化、小売商業立地の多様化が大きく進展することとなった。 3. 1990年代になると、タウンセンターの再生、自動車交通量の削減といった課題への対応が求められ、小売商業の地域政策は再び既存の小売商業地区の地域システムを存続・強化する方向に向かうこととなり、郊外地域での小売商業の開発は抑制されることとなった。 4. 小売商業の離心化や消費者購買行動の分極化の進展によって、今日の小売商業の地域システムは、既存の小売商業地区の地域システムと新しい大規模な小売商業施設のネットワークの二つ、のシステムが併存している。また、その一般的な動向としては、後者の小売商業施設のネットワークが相対的に優勢なものとなってきたものといえる。
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