| 研究概要 |
(1)中国大陸上における梅雨前線の南下・停滞に関する循環場:降水域が中国大陸上で数日間以上継続する場合には,降水域が南下,停滞する場合ともにヨーロッパからのロスビー波列が認められる.ただし,ロスビー波列の位相・位置が異なっており,降水域が南下する場合には西日本〜中国南部に高度場の下降域が現れる.このため亜熱帯高気圧の西〜北西縁は南東方向に後退し,梅雨前線が南下する.また,日本海から低温な北東風が梅雨前線北側に進入するため,下層に低温域を伴う背の低い構造から背の高い構造に梅雨前線の構造が変化し,同時に多降水域の南北幅も拡大する.一方,降水域が長江流域に停滞する場合には,中国南部は高度場の低下域から外れるため亜熱帯高気圧の西方への張り出しが維持され,梅雨前線の南下は起こらない.日本海からの低温気塊の流入はほとんどなく,背の低い梅雨前線構造が維持され、降水の南北分布形態も変化しない.
(2)熱帯降雨観測衛星(TRMM)の資料による梅雨前線帯降水活動:日本付近の降水システムの構造(対流性降水/層状性降水)は前線の性質(中国大陸上を東進する低温域に対応する前線/チベット高原北側から連なる寒帯前線)に関係していることが指摘された.
(3)日本における梅雨季の「雨の降り方」:同程度の総降水量であっても梅雨季総降水量に対する日降水量の階級別寄与率からみた「雨の降り方」は異なる場合がある.日本全体を二分する場合,大きい日降水量階級の寄与が大きい地域には,九州,中国地方西半,東海〜四国南岸,および中部山岳域西部が該当する.総降水量に対して,小さい/大きい日降水量階級の寄与が大きい場合を「陰性」/「陽性」の梅雨と定義すると両者の判別は可能であり,同程度の総降水量であっても「陰性」・「陽性」それぞれの場合が認められる.
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