本研究の目的は、都市地表面放射収支に表面形状依存性があるか否かを種々の観点から議論することであった。この目的達成のため、衛星画像の処理により実際の都市の地表面放射収支の基礎をなしている短波放射反射率と表面黒体等価温度の分布を解析する手法や、コンクリートブロック製の都市模型を作製してその表面温度分布の連続観測をする手法を開発するとともに、数値モデルにより都市地表面放射収支の各成文の表面形状依存性の有無およびその程度をシュミレートできる数値モデルを開発した。 LANDSAT衛星データの解析により、都市域内部においては、地表面アルベドが小さい地点ほど衛星データから得られる表面温度が高温である傾向が存在し、地表面アルベドが小さく、かつ、表面温度が高い、と判断される地点は、建蔽率が高く、かつ、道路中央における天空率が小さい、即ち、表面形状が複雑であることが明かにされた。 都市模型の表面温度分布の連続観測により、都市模型の屋上面、キャニオン壁面、キャニオン床面が異なる水準の温度をもち、この温度の差異が表面形状に依存していることが明かにされた。 数値実験の結果、都市構成面温度に明瞭な表面形状依存性と太陽高度依存性が存在することが明らかにされた。即ち、日中太陽高度が高い場合には、建蔽率が低い程、天空率が大きい程、床面温度は高く、建蔽率が高くて天空率が小さい摩天楼の床面にクールアイランドが形成される。夜間の床面温度はほぼ天空率に従い、天空率が小さい程高温になる。夜間の壁面温度は床面温度を上回り、天空率が0.7近傍で最低温度となり、建蔽率が小さい程低温となる。 上記の研究成果の概要をとりまとめて135ページの報告書を作成した。
|