中米諸国の火山の地形発達史を明らかにすることを目的として研究を行った。メキシコの火山についてはすでに報告済みであること、グアテマラに関しては資料がわずかしか入手できていないとの理由から本年度は除外し、研究対象をニカラグア・エルサルバドル・コスタリカ・パナマの火山に限った。これら地域の火山の地形分類図を作成するなどの調査・研究をおこなった結果、下記の事実が見い出された。 1.ニカラグア・エルサルバドル・コスタリカ・パナマにまたがって70余個の火山があり、成層火山は49個、カルデラ火山が7個、溶岩ドーム・スコリア丘火山が22個で、日本列島に似た火山のタイプが多い地域である。 2.成層火山は前期型と後期型とがほぼ半々に存在し、セグメント毎に一方が集中する場合が一部に見られるが、日本列島に見られる会合部に後期型が、弧状部に前期型が集中するような特徴的な傾向は見られない。 3.成層火山、特に後期型成層火山には島弧の伸びに斜交する寄生火山列が顕著に見られる。これが沈み込みプレートのセグメンテーションと関係しているかは明らかでない。 4.島弧にはめずらしいハワイ型のカルデラを持つ楯状火山がニカラグアのマナグア市の南東部にある。 5.コスタリカアレナル火山の苦鉄安山岩質溶岩流の先端部崩壊でできる火砕流中の岩塊はパン皮状火山弾に似た独特の表面形態をもつ。 6.アレナル火山の溶岩流は火口縁から静かに溢れ出たことが目撃されているが、溶岩は成層構造をもたず、やはり火口縁から溢れ出たことを観察されている秋田駒岳の1970〜71年溶岩流の構造を酷似していることがわかった。
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