太平洋東西両縁地域の火山のタイプの差違について検討し、その要因を考察した。資料入手などの制約もあって、調査地域は北太平洋両縁に限定された。火山のタイプなどの違いを以下のまとめる 1 成層火山は日本列島弧では1発達系列上にのる。フィリピン・千島弧でもほぼ同様であるらしい。一方USA、メキシコでは山頂を通る弱線に沿って流紋岩質熔岩ドームと玄武岩質スコリア丘が並ぶもの、デイサイト質熔岩ドームを玄武岩ー安山岩質熔岩流・火砕物が覆うもの、浸食された成層火山頂を玄武岩質楯状火山が覆うもの、など多様である。これはマントル-地殻下部付近の応力場・温度状態の差違に起因すると考える。 2 中米地域は日本の成層火山と類似し、1発達系列にすべての火山が属するように見え、USA、メキシコの火山と異なる。 3 カルデラ火山は千島・日本列島・フィリピン・中米では「漏斗型」、メキシコでは「Valles型」、USAでは両者混在する。「漏斗型」は沈み込み帯、「Valles型」は非沈み込み帯のカルデラと考えるとよい分布を示す。 4 千島のカルデラの大部分は外輪山を持ち、カルデラ火山でなく後期型成層火山に属すると見る。径6-10kmと成層火山頂のカルデラとしては大きすぎる。これは海水ーマグマの接触による大爆発でカルデラが拡大したものと考えたい。 5 玄武岩質熔岩原・小楯状火山・小成層火山はUSA、メキシコで広く分布し、中米・千島・日本・フィリピンで少ない。フィリピンでは沈み込み帯の中にいくつかの拡大軸が輻輳して存在し、それに関連した小楯状火山がかなり分布する。 6 火山のタイプには沈み込むプレートの性質、縁海の拡大など、プレート運動規模の要因が直接関わっているのでなく、マントル-地殻下部付近の状態とより直接的に関連するらしい。
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